戦時中の有田家を舞台に繰り広げられる、禍々しいまでの愛憎劇。
これは、その渦中にいる有田家の兄弟とヒロインである貴方、三人の秘密が暴かれていく、淫欲の物語――
~上巻~
上巻は、二年間、貴方の夫に幽閉されていた義弟・泰隆が、夫の死をきっかけに解放されるところから始まります。
揺らめく蝋燭の炎、横たわる棺桶――中には、貴方の亡き夫が…。
棺桶を前に、喪服姿で情事に及ぶという背徳行為には度肝を抜かれますが、まるで蝋燭の炎が見せる淫靡な夢のようでもあり、古風な淫語も相まって、とても美しかったです。
義弟・泰隆のみせる狂気的な執着心に、覗く違和感。
真相は下巻へと続きます――
~下巻~
下巻は、上巻から少し時を戻し、貴方が清流に連れられて、有田家のお屋敷を初めて訪れるところから始まります。
紳士的で優しい未来の夫、清流。しかし、その裏の顔は…。
真相に真相を重ねて辿り着く真実。
各々の愛と憎しみが渦巻く、むせ返るほどの狂気……こんなにも苦しくて切なくてぞっとしてしまうのに、その恐ろしくも美しい愛憎の物語に、すっかり魅せられてしまいました。
心の奥深くに刻み込まれる、本当に素敵な作品でした…!!
【3】